「6つだけ」を、
毎日、深く。
代官山の路地、3坪のショーケース。
多く並べることを、辞めました。
23歳、パリへ。
東京の製菓専門学校を出てすぐ、貯めた資金でパリ郊外の小さなパティスリーに飛び込みました。フランス語はほぼゼロ、英語も拙い。それでも「手を動かせば伝わる」という信念で、毎日 5時に厨房入りしました。
最初の1年は皿洗いとフルーツのカット。2年目から少しずつ、生地を任されるように。雇い主のシェフは、当時すでに MOF(Meilleur Ouvrier de France)の称号を持つ職人でした。
「素材より自分が前に出るな。一番おいしいのは、素材だ。」
修行8年、
持ち帰ったもの。
8年間で、パリの3軒・地方の2軒を回りました。最後の2年はリヨンの3つ星レストランのパティシエ部門で、デセールアシエットを担当。30皿を同時に立ち上げる「速度」の世界を経験しました。
持ち帰ったのは、技術だけではありませんでした。「小さなお店で、お客さんと近く、毎日違うものを出す」 形態への憧れ。それが、今の Pâtisserie OPEN の原型です。
代官山、3坪。
2022年、代官山の路地裏に物件を見つけました。3坪。ショーケースを置いたら、お客様が立てるのは3人ほど。多くの方は「狭すぎる」と言いましたが、私には「6つだけのお店」のサイズに見えました。
定番を増やすのではなく、毎日 6つだけを丁寧に。仕入れに合わせて中身を変える。残ったら売り切る。シンプルだけど、一番納得できる形でした。
少なく、深く。
Pâtisserie OPEN.の、変わらない方針です。
主役は、素材。
レシピより、素材選び。仕入れに毎週5時間かけることが、結局一番大事だと思っています。
小麦粉
北海道・江別「ゆめちから」を中心に、生菓子用は北海道・十勝の薄力粉。配合は季節で微調整。
バター
定番焼き菓子はよつ葉、看板のマドレーヌだけはエシレ。香りで使い分けます。
果物
毎週月曜、産地の3生産者と電話。あまおうは博多、レモンは大崎下島、栗は熊本山鹿。
カカオ
ヴァローナ社の3種類を使い分け。ガナッシュは70%、サブレは55%、コーティングは66%。
バニラ
マダガスカル産のさやを店内で。粒は捨てずに、シロップに2次活用します。
塩
ゲランド産の塩。バターの「塩あり」と仕上げの結晶塩を使い分けて。
「ショーケースを覗いて、好きな顔をしてくれたら、
それで、私は十分です。」